2021.08.14

NOKIOOにおける“コミュニケーション”の位置づけ

月刊総務の主催している「eコミュニケーショングランプリ」
残念ながら二次選考から次のファイナル選考に進めませんでした。ファイナル選考に残れば最終選考会で公開プレゼンテーションができ、その場でNOKIOOが取り組んできたコミュニケーション施策とその裏側にある狙いを発表できたのですが、今回その機会は得られず、エントリー用に作ったプレゼン資料をお蔵入りさせてしまうのももったいないため、今回は社長ブログで扱おうと思います。
 
 
タイトルは
「仕事のスタイルを変え、組織を変え、組織変革を目指すコミュニケーション戦略」
 
 
2014年、2015年あたりからNOKIOOでは社内の情報流通、社員間・会社と社員のコミュニケーション全般に対して非常にコストをかけて取り組んできました。当初は一つ一つの取り組みや施策が、全体のコミュニケーション戦略の中のどの位置づけであるか、というところまで詳細に設計をして取り組んでおらず、決して戦略的ではなかったですが、それぞれの取り組みを行いながら、失敗してやめた施策も、そして初めからうまくいかなかった取り組みも改善を繰り返すことで、現時点においては全体感をもって各施策をとらえられ、あたらめて当社のコミュニケーション戦略を取りまとめられる状況になってきています。
 
 
で、そもそもなぜ“コミュニケーション”にそんなにコストをかけて、重要視して経営が手を突っ込んで取り組んできたのかについては、そのフェーズごとの経営イシューを解決し、前に進めるために、それぞれのイシューに対する直接的解決策で無いにしても、会社の中でコミュニケーションをどうマネジメントするかが、結果的にメンバーの動き方を変え、能力を引き出し、組織としての活動につながっていき、その経営イシューを解決するために確実につながっていると考えていたからです。
 
NOKIOOにおける“コミュニケーション”の位置づけは、まさに会社の変革(コーポレートトランスフォーメーション)を実現するための中核にあるエンジンだと思っています。
 
 
2015年以前の当社はIT受託開発を中心とした下請け、客先常駐などのスタイルで仕事に取組み、組織における情報の流れも一方向性の情報伝達型スタイルであり、組織の硬直化や働くメンバーの自主性・主体性が生まれにくい風土でした。この時代の経営イシューは「仕事スタイルの変革」であり、各メンバーが待ち、請けの姿勢を変えていくことでした。
 
 
そうした組織や事業に閉塞感を感じる中で2015年頃から、社内・社外のコミュニケーションマネジメントは経営上のイシューを解決する重要な経営戦略の一つとして位置付けて取り組んできました。
目指すのは、組織内の一人一人が自律的に仕事に取組み、自身の仕事や働き方にオーナーシップを持ち、そして自身が仕事を通じて生み出す価値と会社の成長・価値創出とをつなげていくことにより、人を起点に成長する企業を作ることです。
 
その後も経営イシューは少しずつ変遷をし、育児中で時間的・場所的制約のある人材や、病気・怪我などで一時的に働き方を変えないといけない人材、居住地の変更により本社・浜松エリアから遠方に引っ越しをした人材など、多様な事情の人材を活用するために「固定的な働き方からの脱却」がテーマになったり、
 
数年来取り組んでいた様々な実証実験、探索からサービス、事業の種が見えてきて、いよいよ会社としてビジネスモデル変革や新規事業を立ち上げることが大きな経営イシューになってきたり、
 
と、経営イシューは常に変遷をしていきますが、それらを解いていくのはあくまでもメンバーであることを考えると、メンバーの考え・行動に影響を及ぼすコミュニケーションが重要なエンジンであることは変わりません。
 
 
そういう位置づけで様々なコミュニケーション施策に取り組んできましたが、NOKIOOでは以下のメンバーシップ型とジョブ型の両面を引き出す方針をもち、両面を組み合わせながらコミュニケーションが社内で・社外に対して有効的に発生するコミュニケーションマネジメントを行っています。
 
 
(メンバーシップ促進型)
  • 健全な組織文化を形成し、メンバーが組織に属する安心感やメンバーシップ意識を感じられることを目的とした組織のOSとしてのコミュニケーション施策
 
(ジョブ促進型)
  • 働くメンバーの業務の円滑化、自身のジョブでの効力感・貢献感・成長感覚を得られること、そして仕事・事業を通じて価値を創出できることといったジョブ推進に関わるコミュニケーション施策
 
 
働き方改革やコロナショックによる強制的な働き方の変革要求により、各社の組織マネジメントについてはメンバーシップ型を脱し、ジョブ型への論調が強いと感じていますが、僕はこの二元的なものの見方でものごとを扱うことに危うさを感じています。実際はもっと複雑で両極の間にその会社ごとの最適解があるのだと思っています。
どの会社も事業内容もメンバーの顔ぶれやどんなことを思いながら働いているかも、歴史も規模も異なる中で、各社ごとにあるべき組織マネジメントの方向性や型があり、それは組織論が結果的に後から体系化をしたフレームには当たらないはずだと思っています。
 
ということで、NOKIOOはメンバーシップ型でもジョブ型でもなく「ノキオスタイル(型)」の組織マネジメントスタイルをとっています。
 
世に言うジョブ型、メンバーシップ型を敢えてはめるのであれば、メンバーシップ型のコミュニケーション施策をとり、それを組織のベース、OSとしたうえで、仕事・業務を生産性高く、クリエイティブに進めるうえでジョブ型のマネジメント施策とコミュニケーション施策をとっているハイブリッド型と認識をしています。
 
 
 
 
こうやって全体像を描いてみると、現在行っている社内・社外コミュニケーション施策がどのレイヤーの何を目的とした施策なのかが明確になってきて、その施策を実施する時の運用ルールや視点、心持ちが定まってくるのです。
 
 
 
 
コミュニケーション関係の取り組み施策事例とその内容・意図は以下の通り。
 
 
施策
内容・意図
*2018年6月頃から
メンバー同士1対1のランチ機会。年間で全メンバーが総当たりでラフなランチを行う。費用は全額会社負担。メンバー間の人となりを知る機会として活用。
*2016年2月頃から
社外の方がNOKIOOメンバーを指名し、会社訪問&ランチをする機会。社外との個での発信・受信の機会。
全員日報
*2018年12月頃から
役員から社員、パート職まで全メンバーが社内SNSで日報を発信。共有事項、課題感、気づきなどを発信し、各メンバーの動き・コンディションを知る場として活用。コメントによるコミュニケーションも発生。
社長ラジオ
*2020年4月から
(ほぼ)毎日、社長からの朝5-10分程度のボイスメッセージ。社内ニュースの共有や考え方の発信など、社内情報の共有と共に会社としての意識を統一する機会として活用。
議事録公開
*2017年12月ころから
すべての社内ミーティングの議事録が部署や役職を超えて公開。社内の動きや論点が見えることで各人が自分の仕事に紐づけたり、先回りすることができる、社内情報はオープンであることの象徴としての狙いも。
全員ロジカルシンキング研修
*2016年10月頃から
コミュニケーションを行う上でのベースの思考フレームワークや言葉合わせを行うために共通のロジカルシンキング研修受講を必須化。
edge nokioo/社内ABD(active book dialogue)
*創業時から/2019年12月頃から
隔週の有志発表会や共通認識を作りたい本をテーマにした勉強会のフォーマット。メンバーの業務レベルを上げたり、視点・言葉合わせをすることにつながっている。
しないこと宣言
*創業時から
フラットな、円滑なコミュニケーションを阻害する従前からの習慣は「しないこと宣言」に盛り込み、行動として組織文化に落とし込んでいる。「役職で呼ばない」「紙で出さない」など
フリーアドレス
キャンピングオフィス
*2017年8月から/2018年1月から
メンバーのスタイルに合わせた出社頻度、かつフリーアドレスで、着席場所は毎回ばらばら。オフィスでの偶発的対話機会づくり。
オフィスの一角は人工芝&キャンプギア空間により、“自然”“フラット”“オープン”を場の設えで実現。
週次全社ミーティング&ブレークアウトセッション
*2016年12月/2021年2月から
毎週1回の全社ミーティングにて社内情報共有トピックの発表や、経営情報の説明。同タイミングで小グループ・ランダム設定のブレークアウトセッションで組織内の様々なメンバーとの会話の機会づくり。
クラウドベースのコミュニケーションプラットフォーム
*2017年9月から
Microsoft365を中心としたクラウドプラットフォームをコミュニケーションのベースとして活用。
期待役割定義
*2020年6月から
メンバー個々の期待役割の言語化により、組織とメンバーがお互いの期待を握り合う仕組み。全メンバーに公開され、誰がどんな役割を担っているのかを明確にしている。
 
 
その他の施策としても、
1on1 / 経営方針書冊子配布 / Vチャレ/ Revision / 未来型ワーク企業経営者・実務者勉強会 /オンライン・オフラインハイブリッドミーティング /どこでも旅先オフィス
こんなことに取り組んでいます。
 
 
これらの取り組みを、先ほどの戦略メカニズムレイヤーに位置付けると下記のような感じになり、各施策が何のために行われているかということが認識できます。
 
 
 
こうしたコミュニケーションマネジメントの取り組みを行ってきた中での成果や起きてきたことは、
 
●子育て両立期人材、フルリモートワーク人材、転居や体調の変化で状況変化を抱える人材などをインクルージョンできる組織に。(男女比3:7、名古屋・大分・福岡など遠方メンバーなど)
 
●メンバーの自発的勉強会(ABD勉強会)でのアウトプットが、会社のオペレーションモデルの基軸に(書籍「THE MODEL」に基づくマーケティングプロセス改革)
 
●顧客基盤の広がり(静岡県西部地域・中小企業 → 全国・大手上場企業)
 
●ワークプレースがデジタル上にシフトし、場所・時間的制約で情報格差が生まれない状況に。
 
●社員アンケートより:「メンバー同士の理解を深めることができている」86%(全社セッション「REVISON」アンケートより)
 
●自社のコミュニケーション改革経験をコンテンツ化した新サービスの誕生(育休スクラ
 
こんな状況になってきました。
 
今後は、組織規模(人数)の拡大に向けて、各取り組み・制度の精度や再現性を高めるためのPDCAサイクル実行し、取り組んでいることが組織の成長とミスマッチを行さないように常に戦略との整合性をチェックしていくこと、事業構造改革の結果としての売上伸長・収益性改善により、より社員が力を発揮できる環境・人材育成への投資をしていきたいと思っています。
 
 
 
 
月刊総務・eコミュニケーショングランプリへのエントリープレゼンテーションスライドはこちら(PDF)