2025.07.26

アルムナイとは、“叶え合い”の関係である。

先日、僕が新卒で入った会社(NEC)の元・上司、先輩、後輩たちと、当時は直接接点のなかった同じ事業部出身の面々とで、神奈川・葉山に集まりました。

海で遊び、相模湾越しに富士山を眺めながら過ごすひととき。多くはNECを離れ、それぞれの道を歩む仲間たちとの再会でした。

いや〜楽しかった

 

 
 

適切な言葉はなかったけれど、キャリア自律を模索していた新卒から地元Uターン時代

 
 

僕は新卒でNEC(日本電気株式会社)に入社をしています。自己紹介で自身のキャリアをお話しする際には、某大手SIerとか大手電機メーカーとかぼかしてきたこともありますが、最近は学歴詐称・キャリア詐称で大騒ぎにもなるので(笑)、正確にお伝えするようにしています。

 

新卒でNECに入社をした時期は、NECは過去の歴史で最高売上高を出してから、じりじり下がり始めるタイミングでした。当時は警察系のSIをやる部署に配属をされ、30歳手前にして、早々に退職し、キャリアのフィールドを「東京で大手企業」から真逆の「地方都市で中小企業・ベンチャー企業」という真逆のポジションに移しました。

 

当時の僕はまだ若くて、自分のモヤつく気持ちを言葉にすることができなかったし、今のように「キャリア自律」や「エンゲージメント」「越境・共創」などの言葉もなく、働き方や会社との関係にモヤモヤを抱えていましたが、それをうまく説明する術はありませんでした。ただ、その違和感が、結果的に僕を“外の世界”に飛び出させたのだと思います。

 

当時の日本的な雇用慣行や、会社と社員の関係性を前提にすれば、「退職≒ネガティブ≒悪≒裏切り?」という社会的バイアスが少なからず存在していました。実際退職時に多少なりともそういう声もかけられましたし。僕自身もそうした社会的通念に無意識に影響されていて、退職後、NECに近づくことはしばらくありませんでした。

 
 

NECアルムナイとしての今

 

それが2018年頃にNEC在籍時後輩であった岡本俊介君(現・株式会社Trive 社長)が、NECを退職し、独立してビジネスをし始めていることを知り、そこでの接点が今に至るNECとのあらためての付き合いになってきています。

 

※岡本と相模湾・富士山・夕日をバックに

 

 

最近は当社の越境型次世代リーダー育成プログラムに、いくつかの部署から若手リーダー層を送っていただき、他社の同じ若手リーダー層と混ぜ込んで、私たちの推し進める「全員マネジメント」の考え方と行動手法、職場実践をみんなで取り組んだり、

 

昨年はある統括部に「組織の多様性推進に向けての​管理職意識形成」というテーマでの対話機会を作っていくセッションを実施させてもらったり、

 

今年もある統括部と「役割マネジメント」という、当社の「全員マネジメント」の行動原則のうち

・目指すべき「成果」を描き、チームで握る

・成果を起点に、「役割」をデザインする

に該当する取り組みをご一緒させてもらいます。

 
 

こうして約20年ぶりにNECの中に入り、事業のこと、マネジメントのこと、組織のことを議論し、一緒に共創する機会をいただいているのですが、ふと、先日自分の中で意味づけできたのは、

 

僕自身はそういう経緯もあってNECの中でマネジメントの立場になり、人を育てる・組織を作る事はできなかったが、NECアルムナイの立場で外からNECの後進リーダーを育てる・組織を作るということに貢献できて、こういう形でぐるっと回ってくるのもありがたいし、何かのご縁だな、と。

 

新卒で社会人のいろはを教えてもらったNECに、こうして“外”から関わりながら、次世代のリーダー育成に貢献できるのは、何ともありがたい巡り合わせです。

育ててもらったのに、リターンを返す前に飛び出してしまった。そんな“借り”を、今ようやく違う形で返せている気がします。



 


NOKIOOのアルムナイとの関係性
 

と考えると、こういうアルムナイ(元社員)との関係性では、NOKIOOのアルムナイとも少しずつ築いていることに気づきます。

 

例えば、メンバーのキャリア支援のために元社員で現在はキャリアコンサルタントとしてご活躍の今西敦子さんに、ここ3年ぐらいは、そういう事が必要なタイミングの社員とのキャリアセッションをしてもらっています。

 

ここ3年ぐらいというのは、当社にとっても大きな転換点で、事業もWEB開発事業からHR事業に転換をする時期でした。また、HR事業も立ち上げ期~成長期で、様々な試行錯誤と急速な状況変化の中で、NOKIOOの中で働くメンバーにとっても自身のキャリアという観点で惑いも生まれる時期です。(でした)

 

普段、一緒に事業をやっている間柄や、経営とメンバーという近すぎる関係ではなかなか長期軸でキャリアのことを考えたり、言語化することが難しい中で、今西さんには、例えばWEB事業が終了していく中で、同事業に関わっていたメンバーのネクストステップを考えるにあたってのキャリアセッションなどをお願いしてきました。

また、2020年前後に「育休スクラ」の立ち上げを一緒に走ったまた別のメンバーが、今は別の組織で人事・マネージャーの立場で次世代リーダー育成に取り組んでいて、その背中を僕らNOKIOOがまた支える関係になっている。こんなふうに関係性が“かたちを変えて続いていく”のが、アルムナイの面白さだなと思うのです。

 

こうして、お互いの適時適所適材で関係性を作っていけることに、喜びを感じます。

 

ALLIANCEとの接点とVチャレの思想

 

そう言えば、今年の2月に実施した浜松での「未来型ワーク企業経営者勉強会」では、「ALLIANCE 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」という書籍を題材にディスカッションをしました。

この書籍を読んだ時に、これはまさに当社がここ10年ほど組織作りをするうえでベースとしてきたコンセプト、考え方に近しいものを言語化されていることに驚きました。

この書籍の中にも卒業生ネットワーク(アルムナイ)という話があり、そのアルムナイとの関係性も、在籍時のアライアンスの関係性があってこそ、という話だったと思います。

 

アライアンスの中で印象的だった内容をいくつか紹介すると、

 

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アライアンスの関係は、

 

雇用主と社員が「どのような価値を相手にもたらすか」に基づいてつくられる。

雇用主は社員に向かってこう明示する必要がある。

「当社の価値向上に力を貸してほしい。当社も『あなた』の価値を向上させよう。」

 

社員は会社の成功のために時間と労力を投入し、会社はその社員の市場価値向上のために時間と労力を投入する。

ただカネと時間を交換するのではなく、互恵的な提携関係を結ぶことで、雇用主と社員がこの関係に投資でき、より大きな果実を狙うために必要なリスクを負えるようになる。

 

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ということです。



 

NOKIOOの人事制度「Vチャレ」も、まさにALLIANCE的な思想に基づいています。以下、少し社内で紹介されている文書を転載し、ご紹介します。

 

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Vチャレ

Vチャレの“V”はValueのV、VisonのVと、会社と個人のビジョンに向けてのラインが作り出す形のVを表しています。

 

NOKIOOのビジョンをメンバーと共有することも大切ですが、個々人がどういう自己実現をしたいのか個人のビジョンを描くことも大切です。二つのビジョンを同一の方向性で向かわせていきたいと考えます。各メンバーのNOKIOOにおける役割・活躍・経験・成長の方向性が、会社のビジョンと個人のビジョンと合致する状態を作るためにVチャレに取り組みます。

 

Vチャレシートを使って、会社と個人がそのビジョンやそこへ到達するための仕事の内容・目標を共有することで、個人のキャリア開発のサポートや機会創出ができると考えます。また個人の自己実現に向けた活動が会社への貢献にもダイレクトにつながると考えます。

 

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ALLIANCEもVチャレも核にあるのは会社と従業員のお互いの叶え合いと、自律した大人の相互への価値提供スタンスであること、と理解をしています。

 



結論:アルムナイは“お互いのビジョンを叶え合う関係”

 

ということで、いろいろ書いてきましたが要するに言いたいことは。

相互に自律した立場で対等な関係性のアルムナイは、大元同じ組織で価値観を一緒に育んだ相手でもあり、お互いのビジョンを叶え合う相手になるのだろう。

ということです。

 

企業が発信するアルムナイという言葉には、人材戦術的な匂いがして、ややもすると企業サイドが出戻り復職を念頭(狙い)において取り組まれているケースが多く、目的からしてWin-Win関係の実現範囲が狭すぎる。本来的なアルムナイに含めるものはもっと戦略的なもの・思想的なものであって、アルムナイの皆さんの現業や仕事や成したいことが発展していき、会社側も会社として事業を進め、成したいことに向かっていく、まさに相互に叶え合いをするものだと理解している。

先日NECのアルムナイネットワーク活動に取り組む方との会話で、NECはそうしたアルムナイ活動をしていくという話を伺い、心から応援したいと思いました。

 
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