2021.07.10
「なぜ今経営に、ブランディングが必要なのか?」イベント登壇を経て
先日7月6日に浜松磐田信用金庫様のFUSEが主催する『Post Corona Seminar、なぜ今経営にブランディングが必要なのか?』にてパネルディスカッションに参加をしました。
浜松磐田信用金庫の辻村さんからこの登壇の話を3週間ほど前にいただいた際には、まさにNOKIOOがこの半年間やってきたブランディングプロジェクトを振り返り、言語化する機会となり、かつこれから続けていく活動に向けた論点整理のきっかけになるとても有難い話だと思い、快諾させていただきました。
そしてモデレーターの曽根圭輔さん(i-NNO株式会社CEO)やスーパーバイザーの糸井孝富さん(shigochiDesignLab CEO)との事前ミーティングやキーノートスピーカーのブランディングデザイナー 西澤明洋さん(株式会社エイトブランディングデザイン代表)との当日ディスカッション+事前購読の西澤さん著書「ブランディングデザインの教科書」からも多くの学び、気づきがあったため、今回の社長ブログではこのイベント登壇を通じた自分なりの気づきや論点をいくつか取り上げたいと思います。
まず西澤さんのセミナーにおいては、上述した著書の内容をもとにご本人から解説、事例を丁寧にご紹介いただきました。
受け取ったメッセージとしては、
ブランディング活動を行うということは、即ち経営者が経営としての覚悟を持つ仕事に取り組むということ、そのレイヤーの取り組みであること。ブランディングの中心にはマネジメント戦略があり、何を残し、何を残さないかを決めていく意思決定の作業が伴うということ。ということは、ブランディング活動に取り組むのは後戻りのできない道を歩み始めるのと同じ意味なわけで、生半可な気持ちでは取り組めないということ。自分たちが自分たちの商売にリーダーシップを持たなくても何となくやれる時期・時代・請け仕事、他人(他社)にやることを指示され(委ねていて)て商売ができるうちはブランディングはそれほど必要ではなかったかもしれないが、既に時代はVUCAで、自分たちでリーダーシップをもって、自分らしく、自分の商売することを“選択”しなければならなくなっている状況においては、自分たちで決めていく覚悟を持ったブランディング=経営戦略活動が必要になってくるということ。
こんなメッセージを受け取ったと理解しています。
西澤さんのフレームワークで行けば「ブランディングデザインの3階層®」の最上位層のM:マネジメント(経営戦略)をデザインし、それと一貫したC:コンテンツやC:コミュニケーションを作っていく必要があるわけで、ブランディング活動の起点は経営戦略なのだと。
NOKIOOのブランディングプロジェクトも2020年12月に発足し、月に2回程度のプロジェクトミーティングを行ってきましたが、ブランディング活動を日々進める中で上がってくる論点そのものが、まさに経営の真ん中にある論点と近いことから、タイムリーにそれを議論できる場として週次の「経営―ブランディングミーティング」を立ち上げ、この半年間運営をしてきました。これまでのこうした取り組みを通じて、ブランディング活動=経営活動という認識を持ってはいたが、それを今回の西澤さんのセミナー・ディスカッション、著書、山形緞通様の事例を聞きながら認識を再確認・強固にすることができたと思います。
そして上記の三階層の三角形に縦串しと横串しを通す「「MCC」の一貫性のデザイン」の重要性。西澤さんの言葉では「なめらかさ」という表現をされていたと記憶しています。ここで考えたのはその「なめらかさ」とはどうやったら確認できるのか?ということ。プログラムや数式のように複数の要素のつながりを論理性をもって、正誤で表現できるわけではないため、そのつながり(なめらかさ)が確からしいと担保していくためには、ブランディング活動に関わるメンバー(ほぼ社員全員ということになると思うのだが)が、議論の中で言葉を使いながら、なめらかか否かを確認しあっていくことになるのかな、と考えた。
となると、そのブランディング活動を行う組織自体の言語操作力や、そもそも言葉を使って粘り強く認識合わせをしたり、議論をする風土・体力がないとそれが実現できないのではないかと思う。パネルディスカッションの中でもNOKIOOの取り組みと紐づけてお話ししたのだが、2016年頃から社内で言葉合わせ、目線合わせ、議論のかみ合わせを良くしていくこと、議論体力・持久力をつけていくために全員ロジカルシンキング研修を僕が講師になって続けてきており、これをやってきたからこそ、それから5年が経った2021年にNOKIOOでもブランディングプロジェクトを立ち上げ、ここのなめらかさを確認するような難しい議論ができる組織の素地ができてきているのではないかと思った。
裏を返すと、組織内にこうした言語操作力、議論体力・持久力がないと、ブランディング活動における「「MCC」の一貫性のデザイン」が難しいのではないだろうか、という僕なりの仮説である。
その他、西澤さんの当日のお話や著書からの自分なりの論点や今後考えていきたいポイントは以下のとおり。
- 「か・かた・かたち」とディレクションという考え方が、経営にデザインの力を活かしていくうえでキーになる考え方だと感じている。
考え方・本質・コンセプトであるが、
それが目に見えてくる「かたち」は現象であり形態であり、実際に手を動かしてデザインをするところ(狭義のデザイン)。
ここをつなぐのが「かた」ということだそうである。
詳しくは「ブランディングデザインの教科書」に書かれているが、ここの「かた」で握り合う理解や法則性、技術と言われているものが具体的には何なのか、自分たちの活動でいくとどの部分を指しているのかを認識をクリアにしていきたい。ここが意識できてブランディングディレクターと議論をかみ合わせていくと一気に経営とデザインがつながっていくのだろう、と。
抑えるべき肝は分かった気がする。
それが目に見えてくる「かたち」は現象であり形態であり、実際に手を動かしてデザインをするところ(狭義のデザイン)。
ここをつなぐのが「かた」ということだそうである。
詳しくは「ブランディングデザインの教科書」に書かれているが、ここの「かた」で握り合う理解や法則性、技術と言われているものが具体的には何なのか、自分たちの活動でいくとどの部分を指しているのかを認識をクリアにしていきたい。ここが意識できてブランディングディレクターと議論をかみ合わせていくと一気に経営とデザインがつながっていくのだろう、と。
抑えるべき肝は分かった気がする。
- 山形緞通さんの事例をお聞きしながらも思ったのだが、会社において稼ぎ頭の事業やサービスと、社会からの注目度や価値を高く見積もられ伝わっている事業やサービスが存在するケースがあると思う。例えば医療系ベンチャーのMEDLEYは(僕の勝手な解釈では)稼ぎ頭は医療人材プラットフォームだが、この企業が注目を浴び、表看板で見えるのはオンライン診療の仕組みという状況。こういう複数事業が存在する会社や、既存事業の上に新事業を重ねていくときのブランディングの肝みたいなポイントをより深めたいと思った。
- ブランディング活動は短期志向では取り組めない。これはNOKIOOでもブランディング活動に取り組み始めた時から覚悟していたし、今回の機会も通して再認識したことだが、では長期的取り組みとしてとらえたとして、活動してきたことが成果につながり始めているサインとして何を見るのが適切なのだろうか。長期活動としてどういうマイルストーンを設定するといいのか、そして時間尺度の捉え方は。この辺の認識も深めたいポイント。
- 先ほどの「か・かた・かたち」の考え方において「かた」までを社内で作り、「かたち」をアウトソースしていく時に、「か⇒かた」で認識を合わせてきたことと、それを他者に伝え・理解してもらい一貫性のあるデザインを作ってもらうことがなかなか難しいと感じている。まさにブランディングディレクション力なのだろうが、そこをやりうるスキル・組織的能力はどう育めばいいのか。
この辺の論点・ポイントについて考えながら、社内でも議論をしていきながらNOKIOOのブランディング活動をさらに進めていきたいと思える機会でした。
さて、僕がパネルディスカッションにおいて冒頭5分ぐらいで紹介したNOKIOOの紹介と、ブランディングに対する取り組み紹介のスライドはこちら。
小さく出見えないでしょうが、言いたかったことは、NOKIOOにおいては言葉として世にあった「ブランディング」に取り組もうと思ってブランディング活動が始まったわけではなく、
NOKIOOはこの4-5年で組織を変え、働き方を変え、自分たちのユニークなものを創ってきて、その過程で様々な試行錯誤と組織内での議論・思考をしてきた結果として、今自分たちに必要な活動って何?その活動を書き出してみると「自分たちの存在意義は何で?どんな価値を社会に提供していて、これから研ぎ澄ましながら提供したくて。顧客などのステークホルダーにはどう見られたくて・・・・・など」こんな感じの問いが生まれてきた。
これらの問いを詰めていく活動って世に言われる「ブランディング」ではないか、というところからブランディングプロジェクトが生まれている、ということです。
糸井さん、曽根さんとの事前ミーティングでもお話ししたのですが、
浜松という地方都市で事業をやっていたからこそ、マネジメントキーワード・トレンドキーワードが入ってくるのが遅く、「そういう手法があるからやってみよう」ではなく、自分たちの頭で考え、やってみて、本質に近づこうとまた考え・議論した結果、必要なことは何かにたどり着き、それが結果的に世に言われているマネジメントキーワードだったりトレンドキーワードだったということはよくあった。
人間中心設計、UX、デザイン思考、カスタマージャーニー、テレワーク、ワーケーションなどなど。後からそのキーワードを知って、確かにそれに近いことを自分たち取り組んだし、考えたよね、ということ。
これって実は地方のアドバンテージではないか、というそんな議論もしていたので、当日のセッションではお話しできませんせでしたが、このブログで言及しておきます。
最後に一緒にパネルディスカッションに登壇いただいた合同会社ことゆく社の代表・和久田さん。和久田さんとは彼女たちが創業時にはましんチャレンジゲートを通じて、立ち上げ期の2018年夏から年末にかけてメンターをさせていただいてからのご縁で、今回一緒に登壇をしながら、直近の活動や課題感を聞かせていただきました。彼女たちのランドセルもブランディングの力を使って必要な人に「伝わって」いくことができると思います。互いに頑張りましょう。