2025.01.16

戦略はチーム内で問い続けることで磨かれる

「“変革”って、言葉にするのは簡単だけど、実際に組織に根付かせるのは本当に難しい。」

 

ここ数年、リアルのケースで実感することが増えています。2020年代に入って、NOKIOOの中で様々な組織変革の取り組みをしてきましたし、当社の事業(組織開発支援)を通じてお客様組織の変革の伴走をするケースも見てきています。その中で何度も壁にぶつかりながらも、試行錯誤を繰り返す中で、ふと気づくと、数年前や1年前といった年単位での差分を感じ、何年も前に掲げたビジョンがじわじわと形になってきたり、変革が少しずつ進んでいることを感じながら、変革とはなかなか険しい道のりだな、とあらためて客観的に思うのです。

 
 

変革を組織に根付かせるためには、どんな戦略が必要なのか?

 
 

NOKIOOでは、経営方針書に「戦略」の要素を落とし込み、経営方針書を使い込んでいく中で、戦略に含まれる様々な要素がつながり、ストーリーになっていくように仕掛けているつもりです。

 

そして、戦略というものはシンプルで短く端的なものなのか?と問われると、僕は「NO!」と考えています。では、なぜ戦略はシンプルにできないのか? その理由を考えるヒントになったのが、年末に読んだこちらの書籍でした。



 

企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのか

著者:宇田川元一氏
 
 
 

この書籍は、とある定期的な勉強会で取り扱うテーマとして選定がされたので、開催される1月12日のその勉強会に向けて年末に読み進めていました。

 

・外部環境の変化によって既存事業が徐々に悪くなっていき、慢性疾患状態になっていること。今すぐ変革をしないといけない緊急性はないのだが、将来を見据えた時には何かしら手を入れる決断をしなければならないのだが、、、という重苦しい状態。

・企業変革は「対話」することであり、「他者を通して己を見て、応答すること」を繰り返す中で、顧客と対話し企業の果たすべき役割を見出すこと、組織のあらゆるレイヤーや関係者が対話し、組織の活動(変革)に参画をする状態を作ること。

 

これらは、まさにNOKIOOが2020年代、ここ4-5年をかけて行ってきたことに他ならない事であり、自分たちの過去の活動と照らしてみることができました。

 
 

こちらの書籍では、「企業変革の4つのプロセス」を繰り返し回し続けることで、組織に変革を根付かせることができるとしています。

① 全社戦略を構築し、② 経営陣で認識を合わせ、③ 部門に展開し、④ 実践とフィードバックを繰り返す。



 

 

いずれのプロセスにおいても“戦略”が中心にあり、戦略の構築、認識の共有と合意、部門への展開、現場での施策へのつなぎ込みやフィードバックといった要素が含まれます。

 

ということで、”戦略”に対しての僕なりの捉え方や、当社での取り組み、当社の提供するチームワークスキル開発・組織開発の取り組みがこれらとどう関係するのかを紐解きながら、このブログを続けていきたいと思います。



 

さて先ほど触れた戦略に関する「問い」として「戦略とはシンプルで短く、端的なものなのでしょうか?」について、僕の考えているところを展開していきたいと思います。

 

これは当社の戦略が記載されている経営方針書です。

 

 

それなりのボリューム感があり、その中に含まれる戦略が決してシンプル・端的ではないため、もっと分かりやすく、要するに「これだけ!」という方が動きやすいのでは?という指摘を受けたこともありますが、僕の考えでは、この「問い」に対する答えはNO!です。戦略とはシンプルで短く、端的なものではないということです。




 

僕が”戦略””経営戦略”というキーワードについて、様々な戦略論や戦略に関する説明がある中で、しっくり来ているのは以下の二つになります。

 

「戦略的な意思決定とは、長期的な視点に立ち、多く論点を含めて総合的に決めること」

書籍:藁を手に旅に出よう”伝説の人事部長”による「働き方」の教室 著者:荒木博行氏より

 
 

「戦略の神髄はシンセンス(綜合)」

「戦略は因果論理のシンセンスであり、それは「特定の文脈に埋め込まれた特殊解」という本質を持っています。優れた戦略立案の「普遍の法則」がありえないのは、戦略がどこまでいっても特定の文脈に依存したシンセンスだからです。」

「特定の文脈に依存した因果論理のシンセンスである以上、戦略はワンフレーズでは語れません。ある程度「長い話」にならざるをえません。」

書籍:ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件 著者:楠木建氏より

 
 

要するに戦略というのは複雑であるし、多くの論点・要素を含むものであるし、長い時間軸の中に散らばっている。それらの論点の因果がつながってストーリーとなってくることが重要であり、そのストーリーが論理的につながっているかが重要であると。

 

僕自身は組織の中での仕事の仕方についての在り方として、「とにかくこれをやればよい、そのほかのことはあれこれ考えなくてよい。」というものは目指していないし、これをやることで、「企業変革のジレンマ」での紹介のあった「断片化」「表層化」のようなことが起こり、「不全化」も加えて構造的無能化のメカニズムが揃うのだと思っている。

 

 

具体例として当社の方針・戦略に話を引き戻すと、この冊子が当社の経営方針書・事業計画書であり、この中に当社の戦略の論点・要素が記載されています。当社の理念・MVV・働き方のポリシー・人事制度・組織体制とその意図・各自の期待役割・戦略方針・事業上の肝になる顧客戦略・商品戦略・営業戦略・ブランド戦略他、、、、かなりのことが書かれているため、100ページを超えるものになっていますが、この方針書と日々の経営活動・事業活動を常にリンクさせる組織マネジメントの仕組みとセットで活用していくことで、先ほどの企業変革の4つのプロセスを常に動かし続ける、往還させることにつながっていくと感じています。

 

 

これを使って具体的に何をやっているか。

 

・年3回の全社セッションについては、この方針書をベースとした共通認識作りであったり、その時の時間軸で重要となるテーマ(イシュー)を設定し、部門横断的な即席チームで分科会ディスカッションをすることで、戦略テーマへの学習を促したり、自身の仕事がそのテーマとどういう因果でつながっているかを考えてもらう。

 

・毎週~隔週の全社ミーティングでは、視覚的ツール(ホワイトボード的な電子ツール)を使って、具体の情報共有テーマと、抽象の戦略テーマがどうつながっているか。「経営方針書の〇ページに表現されていることだけど、、、」というフレーズで、具体仕事と戦略の接着を行う。

 

・またその全社ミーティングの輪番進行役のメンバーには、ミーティングの最後にスピーチタイムを設けているが「経営方針書からの気づき、共有」というテーマで設定しているため、担当になったメンバーはスピーチ準備=戦略に考えをめぐらす機会になるし、スピーチを聞くメンバーも発表者の触れているページを見て、スピーチと一緒に理解する機会になる。

 

・物理的冊子にし、クリエイティブや質感にもこだわることで、常に近くにおいておき、さっと取り出せるUXを実現させる。

 

・社内に「経営方針書の〇ページに表現されていることだけど、、、」というフレーズを流行らせる。



 

こうした取り組みが、おそらく派生して、各テーマ別のミーティングや仕事の場面で、同じような経営方針書を中心に据えた活動になっていると思われるため、そうした機会を通じて、多くの論点をメンバー全員で解き、つなげ、戦略的に考えることをしたり、各ミーティングがこれにそって行うことで4つのプロセスの往還を生じさせている。と思われます。

 

過去に(数年前に)、メンバーからNOKIOOの経営方針書は文字が多く、もっと視覚的にシンプルに分かりやすくしてほしい、、、という声もありましたが、論点を絞る、だいぶ抽象化して見やすい図表で済ませる、というわけにはいかないというのが僕の考え方です。

 
 

繰り返しになりますが、戦略的であるというのは論点の多さと、時間軸の長さであり、その複雑性の中から、大きな流れを理解でき、いくつもの論点の因果を理解できることで初めて戦略的に動ける・仕事ができるということであるから、中の人に対してはそれを求めたいと思っているのです。

一方で、外の人については戦略を端的に示す表現が必要であるのは間違いないので、外と中での使い分けが大事なのだろうと思っています。



 

もう一つ問いとして「そんな、いちいち仕事を進める上で、戦略とのつき合わせ、複数論点を考えるような環境下で仕事をしてはスピードは上がらないし、この考え方はビジネスを拡大・スケールさせることにとっての障害ではないのか?」ということについて考えてみたいと思います。

 
 

これはどういう経営であるかというスタンスの話なのかなと思っています。単純化され「君は短期的にこのことだけを考え、このことだけをやってくれればよいから」というのは人の機械化であり、仕事の面白みを奪うことになり、またその人の長期軸での仕事力を殺すことになると考えています。

 

また組織サイズが大きくなってくる過程においては、組織のチーム単位ごとにこういう組織マネジメントを行えばいい話。要するにチームごとの組織運営スタイルとしてカスケードをしていけばよいのだと思っています。そういう意味で、今はそのスタイルの礎を作っている期間としてトップが時間をかけ、粘り強くその組織マネジメントを行っていますが、組織が拡大していく中で、同じスタイルをチーム組織単位でやっていくタイミングが来るのでしょう。

 
 

そういう意味で、

「今度は自分がチームトップの立場でこういう組織マネジメントでチームをを動かしていく側になるんだからね!」

→今いるNOKIOOメンバーへのメッセージ。

 
 

あとは、ビジネススケールの観点に関しては、取り組むビジネスモデル特性にも依るのは言うまでもないですね。当社のビジネスモデルは知的生産モデルであるわけなので、いかに戦略を磨き、それが理解・浸透し、それに基づく日々の仕事が積まれることで価値を生んでいくビジネスなので徹底してやろうと考えているのです。

 

「“戦略”は、人を動かす“物語”」

NOKIOOの経営方針書は、単なる指示書ではなく、一人ひとりがその物語を紡いでいくためのもの。ではその物語を作るために、何が必要なのか?

 

これこそが、僕たちが大切にしている「問いのデザイン」です。

企業変革は、時間をかけて、組織の中に問いを生み、その問いを元に対話を重ねて、共通の物語を紡ぐこと。それが私たちの戦略に対するスタンスです。

 

ということで、ここまでは企業変革のジレンマのプロセスの中心軸にあった”戦略”に関する考え方に触れてきました。

 

企業変革のジレンマであった企業変革の4つのプロセスを絶え間なく企業内に根付かせていくことはまさにその通りだと考えていますし、それの中心に対話を据えることもまさに合点です。



 

最後に私たちが事業として取り組む人材育成・組織開発事業を通じて提供しているコアとなるチームワークスキルの4つのスキルと、この4つのプロセスの持続的展開と精度向上を阻む「断片化」「表層化」「不全化」についての関係性について説いておきたいと考えます。

 

こちらがNOKIOOの掲げる4つのチームワークスキル。

・問いのデザイン

・役割マネジメント

・ヘルプシーキング

・対話

 



 

「問いのデザイン」で、組織の中に健全な問いを生み、解くべき課題を明らかにして、狭い認知枠組みになってしまっている状態をほぐしていく。

戦略を実行する組織において、本当に重要なのは、決まった戦略をただ実行する事ではなく、その戦略を問い直し続けること。問いがなければ戦略はただの「指示」になってしまい、それこそ④全社戦略・変革施策のアップデートが行われなくなってしまう。

 

「役割マネジメント」でチームの成果、自身の成果を定義と組織内の合意形成を行うことで、分業化・ルーティン化で断片化されてしまった個々のチーム・個人の仕事に対して組織内での意味づけをする。

 

チームとしてパフォーマンスを上げるための「ヘルプシーキング」スキルで、部門間・階層間の隔たり意識を解消し不全化をなくしていく。

 

そして全ての活動のベースとなる「対話」をコミュニケーションの中核において、組織メンバー全員を変革に巻き込んでいく。




 

皆さんの組織にはどんな問いが立っているでしょうか?戦略は問いを持つメンバーの手で磨かれ、変化していくもの。皆様の組織ではそんなプロセスをどうやって作っていますでしょうか?

 

新年1発目のブログでした。だいぶ長くなりましたがお付き合いありがとうございます。