2019.06.12

地方都市での新しい人材育成・人材流動モデル「浜松市IT人材育成・就業支援事業」

2017年から浜松市産業部と取り組みを始めた「浜松市IT人材育成・就業支援事業」が今年で3年目を迎えます。
 
 
 
まずはこの事業が生まれてきた背景について。
2016年夏ごろ、NOKIOOは第二創業をスタートするタイミングを迎え、新たな人材で組織づくりを進めていくために積極的な人材採用活動を進めていました。
が・・・・、思ったように人材採用は進まず、そもそも求めているような人はいるのか?とマクロな環境に目を向けると、そもそも地域にIT人材が少ない、もしくはこれから私たちを含め成長企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)をしていくにあたって、それに必要なIT・デジタル分野のスキルを持つIT人材がいないことに気づき、いないのであれば育てていくしかないという発想がスタートでした。
 
 
また当時の浜松市の行政のテーマとして、ベンチャー企業誘致や市内ベンチャー企業の成長促進に向けての舵を切り始めたタイミングで、こうしたベンチャー育成の観点で考えても、IT・デジタル人材の育成・確保が急務という背景もありました。
 
 
 
2年間事業に取り組んでみての成果・実績として、
1年目の2017年度は40人の母集団を形成し、4-6ヶ月のITスキル教育とその後の就業支援の結果、何と・・・5名のみの就業実績という厳しい結果でした。
なぜこの結果だったのか、何が足りないのかを分析し、翌2018年の事業の進め方やプログラムに反映させたところ、2018年度は40人中34人が市内の中小企業・ベンチャー企業に就業が決まるという、前年のふがいなさをひっくり返す結果を出すことができ、僕らとしても自信を持つとともに、この2年間の取り組みの中で、多くのことを学び、見えてきたものを感じています。
 
 
数値実績は上記のとおりですが、数値の裏側にある見えてきたものや、これからの地方企業での人材問題や働き方改革に思考を延ばして解釈をしてみます。
 
 
 
このプログラムに参加してきた女性は、それぞれの個別の事情や環境がありますが、30代から40代の女性が中心。大学卒業後に民間企業(大手企業勤務者も多々)に就職し、仕事に10年、15年取り組む中で、仕事に必要な資格取得をしたり、仕事のやりがいを感じてきた人たち。育児期に入り、仕事から少し離れた時間があり、その状態からどうやってまた仕事に戻っていくかを模索している、あるいはこのタイミングを転機にこれからの働き方や自分のキャリアについて見直しを考えている。こういう人物像が中心だったと思います。
 
 
彼女たちが就職をした10数年前はまだ “働き方改革” も “人生100年時代” という言葉もなく、昭和的働き方や大企業信仰が残っていた時代。
この10数年で仕事観、キャリア観には大きな変化が起きていて、その変化について改めて俯瞰的に見てもらうことによって(そういうキャリア教育プログラムを研修内容に入れています)、彼女たちのキャリア観も今の時代にあったものにアップデートされていきました。
こうした仕事に対してのベーススキル・経験・地力のある人材が、キャリア観を変えて、次のステップに必要となるITスキルを身につけ、地域のこれから伸びゆくベンチャー企業や中小企業へ就業をしていく。そんな構図を作れたのではないかと感じています。
 
 
こういうサイクルをまだまだ規模は小さくとも、地方都市で実現したことは非常に意義深いものだと感じています。
どこもかしこも人材が採れない、普通にこれまでの手法でハローワークに、人材紹介会社に、就職情報サイトに求人を出していても採れない時代に、こうした従来のチャネルでは接点を持ち得ない人材にリーチできる手法になっているのではないかと、感じました。
 
 
これから伸びゆく中小企業、ベンチャー企業ほど、働き方や組織づくりに対して未来志向を持っていて、こうした優秀な人材が力を発揮するために組織や働き方がどうあるべきかについて真剣に考えていらっしゃるし、実践しながら、より自社にとってあるべき姿を模索している。動きも早いし、そこに対してのトップのコミットもある。こうした企業に優秀な人材がITスキルを身につけて、単なる労働力としてではなく、その会社の成長エンジンになっていくことをイメージすると、時代に取り残されるレガシーな会社に人材を囲われるのではなく、そこから引っ張り出して成長企業に人材を回していくことにもなると思い、大きな視点で見ると地域経済や日本経済に貢献していくことにつながると思う。
 
 
我々企業側も、人材側のバージョンアップに対して先行してバージョンアップしていかなければ優秀な人材は残らないし、会社にも入ってきてくれない。
 
 
NOKIOOもこの昨年の事業を通じて2名の人材に入社していただきました。
2人ともこの5月で半年が経過しましたが、既に事業の中心として十二分に活躍をしてもらっていますし、頼もしい。その評価を伝えているつもりではありますが(伝わってますか?)、こうした状況が他の採用された会社や就業した女性でも起こっていることを想像すると、本当に社会にとって必要とされる事業になっていることを嬉しく思います。
 
さて、3年目の事業が開始されています。
 
≪未来型スキル2019 2019年度IT人材育成獲得支援事業(主催:浜松市)≫
https://it2019.on-mo.jp/
 
さらに事業をバージョンアップさせることと、これをNOKIOOの自主事業として昇華させていくために何がしうるかの試行錯誤を続けていきます。
  • NOKIOO
  • 小川健三