2026.10.11
全社セッションを事業につなぐデザインと、AI時代に大事にしたい「統合」の思考
10月2日に浜松本社The Garageで全社セッションを実施しました。

今回はその様子とともに、経営の立場として、またWSD(ワークショップデザイナー)として、僕がどんなことに気を回しながら、この時間をつくったのかを書いておきたいと思います。
社員・メンバーの結束を促したり、自分たちの会社・事業の方向性への理解や共感を深めたりする取り組みを、「楽しかったね・・・」で終わらせず、その先の事業とアクションにどう接続していくか。その裏側の話と、AI時代にますます大事になってくると思われる「統合」的思考について、NOKIOOメンバーの皆さんにもお伝えした話です。
一日集まることに、何を期待しているのか
NOKIOOの全社セッションは、普段はオンラインでつながりながら仕事をしているメンバーが、本社のある浜松に集まり、一日かけて様々なセッションをする機会です。社員に加えて、日頃から一緒に仕事をしているパートナーメンバーも参加します。

丸一日、普段の業務を止め、全国から集まるメンバーの交通費・宿泊費・時間コストも使いながらも、こうした機会をつくることで、メンバー同士の関係性がつくられ、普段のやり取りでは落としている隙間の情報や理解を埋めることができます。ここで自分たちのナラティブを一緒につくったり、身体的な共同感覚や共同体験を持ったりすることが、その後のやり取りや判断をスムーズにし、結果的に中長期的には仕事の質もスピードも上がり、組織を強くし、事業を加速させることにつながっていくと考えています。
今回は、10月頭という時期にも意味がありました。当社は12月から新しい事業年度が始まるため、この時期は、経営で考えてきた来期の戦略を、事業サイド・現場サイドも巻き込みながら具体化していく節目 にあります。
当日は、皆の近況や、普段の仕事で感じていること、今日の時間への期待を共有するチェックインからスタートし、その後、この6〜8月に経営で取り組んできた中期事業構想・中期事業計画を共有しました。昨年の構想と比べると、だいぶ解像度が上がり、事業が強くなり、成長や質の向上につながっていく構造も、具体的に示せるようになってきています。

そうした状態として表現できるようになってきたのは、各メンバーがこの一年、具体的な仕事や役割を進め、事業を前に動かしてきた賜物です。自分の何の活動が、この構想の具体化につながっているのかを感じてもらいたい。そして、ここから4〜5年を見たときに、チームとして、自分として、何をアップデートしていく必要があるのかを考えてもらいたい。ということで、構想の共有の後にはそうした問いをメンバーに投げかけ、グループで考えてもらいました。
午後は、来期の重要テーマを複数グループに分かれて、分科会形式でディスカッションしたものを全体で共有し、最後は懇親のセッションを実施しました。これまでは事業系のセッションが終わった夕方以降に懇親会を設けていましたが、遠方のメンバーが帰りの都合で参加できないのは残念なので、今回は一日のプログラムの中に含めました。
個々のセッションの詳細は、今回のメインではないので省きます。
※懇親セッションで実施した「他己紹介ワーク」。当社サービスのManabiBase内のプログラムを使いました。大盛り上がり!

場づくりが楽になってきた、その先の設計
今回あらためて感じたのは、以前と比べて、全社セッション当日の場づくりが僕にとっては圧倒的に楽になってきていることです。参加メンバーの姿勢や、対話・議論の質を高める力が育ってきていることに加えて、机や椅子を動かしたり、空調を調整したり、なんやかんやの物理的な場づくりにも、誰かが主体的に動いてくれます。
こちらが様々なことに気を揉まなくても、良い場がつくられていく。そんな感触は4月に実施した前回の全社セッションから感じていましたので、そういうレベルに達してきた時に、さらに次のステップへ進むための、ワークショップデザイナーとしての努力ポイントは何だろうかを考えながら、今回は全体設計をしていました。
今回意識したのは、当日の時間だけでなく、全社セッション前、全社セッション後も含めた時間軸で設計することです。
当日に至る前のプロセスとして、当日午後の分科会については、あらかじめテーマと、その背景の説明文、参考資料を提示しておきました。ワークショップ設計の原則でいうと、「アウトプットを前提としたインプット」の設定です。普段なら流れてしまう資料や社内情報も、当日の議論を経て、自分たちのアウトプットの元になるという前提でインプット機会を作ると、情報に対する感度やキャッチの仕方が変わってきます。
自分の問題意識と結びつけながら情報を受け取り、当日はそれを持ち寄って対話することで、皆で景色を合わせていきました。そして、そこで広がった話をどう事業につなぐかについては、全社セッション後の別日の時間を使いました。
「私はこの一つ」を選び取る
対面で一日を過ごすと、普段よりもずっと多くの情報が飛び交い、対話も深まります。「あんな話があった」「こういうことも課題だよね」と様々な話が広がり、感情的にも「楽しかった。まだ興奮がさめない」という状態になりますので、そこで自分に残ったものを、後日あらためて考え、濾してドリップする時間を設けました。
今回は金曜日の全社セッションの翌週月曜日に、隔週実施の全社ミーティングがありましたので、その時間を使い、一人一つだけ、「問い」の形でイシューを設定するワークを実施しました。
全社セッションで気づいたから、すぐに手足を動かすのではなく、その前に何を解くべきなのかを定める。イシューの質を高めずひたすら動いて・議論しても本質的な成果に届かない「犬の道」を歩まないようにすることが、この時間の狙いです。
※当社経営方針書内の1ページ「犬の道」は歩まない。
メンバーには、「あれもこれもではなくて、シャープに練り込んで、私はこの一つ」「一日を過ごしたけれど、私にとってはこれが大事だった。これをチームや経営と議論していきたい」ということを、一つの問いとして設定してほしいと伝えました。そして、できれば統合的な思考で、その問いをつくってほしい、と。
ここには、最近の僕自身の問題意識も反映されています。
AIと仕事をしながら、総体を見る時間を持てているか
ここ一年で会社の業務にはAIが入ってきて、普段からメンバーも僕も、AIを使いながら仕事をしています。情報を整理したり、比較したり、細分化したりすることで仕事は進むのですが、一方で、冗長な情報があふれかえる状態にもなっています。
分けて分けて、さらに分割して、結局、総体として何だったかがよくわからない。ゲシュタルト崩壊みたいなことが、自分の仕事でも起きている感覚があります。全社セッションでも紹介した『知的生産のセンス』を読みながら、あらためて考えていたのも、このことでした。

見聞きしたことや、あれが大事かもしれないと思ったこと、飛び地にあったあの文脈、においや手触りのような感覚的なものも重ねながら、「要するに、こういうことかな」「これが大事だ」と選び取る。そうした統合的な思考を、自分はどれだけできているだろうか。AIと一緒に情報を細かく整理する時間が増えている中で、自分が総体を見て、何が大事かを考える時間を、ちゃんと取れているだろうかと思うのです。
今回のイシュー設定でも、当日の議論に加えて、普段感じていた違和感や、その場では出なかった問題意識も重ねて考えてもらいたいと思っていました。対話を通じて皆の問題意識が重なり合ってきたところで、その重なりの部分を、うまく一つの問いの言葉にする。単に論点を分解して並べるところから、もう一歩、統合して考えることに挑戦してもらいたかったわけです。
問いを磨いて、事業計画の議論へ渡していく
全社ミーティングでは僕からこうした説明をした後、7分の個人ワークで一人一つの問いを考えてもらい、「せーので、ドン」で、全員で一斉にチャットへ投げ込みました。その後、お互いの問いを読み、気になるものについて背景を聞きながら、全体で対話していきました。
こうすることで、あれもこれもと枝葉に引っ張られがちなところから、自分にとって何が大事だったのかに視点を戻していきました

7分ではイシューを表現しきれない人もいますので、その後に磨き直し、翌日正午までにTeamsへ投稿してもらうことにしました。問いに至った背景が伝わるようにしつつ、コンパクトに、シャープにまとめることをお願いし、ここはAIを使わず、自分の言葉で書いてもらいました。
こうして集まったイシューを経営で眺めながら、来期事業計画の策定プロセスにつないでいきます。このイシューはどのチームで考えるのか、どれを経営が引き受けるのかを整理し、問いを扱う場所を決めて、次の議論へ渡していくのです。
結構、難しい、頭をひねる時間ですが、それを当日から時間的に少し離して実施することで、”楽しかった”全社セッションの高揚感をクールダウンさせつつ、本当に自分に残った大事な問題意識を選び取り、事業に接続させていく。今回は、当日の場づくりに加えて、そこで生まれたものをその後に生かすところまで、前後の時間も使いながら設計していました。
全社セッションや全社大会のような場づくりの参考になればと思います。そしてNOKIOOのメンバーには、セッションづくりの裏側にある意図も感じてもらえたらと思っています。組織が大きくなっていく過程で、こうした社内セッションの設計やファシリテーションも、皆さんに委ねられていきますので。

















