2026.01.25
骨太人材とは何か
先日、伊達洋駆さんとオンラインで1時間ほどお話しする機会がありました。
その対話の中での気づきや発見、これまで考えてきたことの再定義ができたことが面白く、ぜひ皆さんにも共有したいと思い、今日はこの文章を書いています。
今回の対話を通じて、僕自身が一番アップデートされたのは、「骨太人材とは何か」という問いでした。
伊達さんはビジネスリサーチラボの代表で、人材・組織に関する研究・リサーチ・コンサルティングなどを手がけていらっしゃいます。僕たちNOKIOOはどちらかというと実践知先行で、まずやってみる。失敗してみる。そこから学習する。そのうえで、あとから理論やデータを紐づけ、裏付けていく、というアプローチなので、伊達さんには、僕たちの取り組みを伊達さんのメガネ(伊達メガネ??)で見てもらい、それを評してもらったり、着眼点を投げ込んでもらうのがとても面白いのです。
昨年も2回ほど、当社のウェビナーにも参加いただき、そういう役割分担で人材開発・組織開発の事を語ることがありました。
「全員マネジメント」で、チームが動きだす ―“自走するチーム”が成果を生み出す、新しいマネジメントのかたち―
今知っておくべき「事業成果と対話」のメカニズム ~成果を変える対話、変えない対話~
そんな伊達さんが主宰する「ビジネスリサーチラボ」のメルマガに、 「知識創造の場を育てる ― 実践共同体が組織にもたらすもの」 というコラムがあり、昨年の秋にそれを発見していました。
伊達さんのコラムの中にあるキーワード「実践共同体」や、僕たちの最近の課題意識の中にある「正統的周辺参加」という言葉は、正直、日本語なのに分かりづらい、というか難しい。僕なりに噛み砕くと、「人は、関係性の中で少しずつ参加度を高めながら育っていく」という話だと理解しています。
そのため、このタイトルを見て、コラムを読む中で、これは自分たちが今プロダクト開発で取り組むManabiBaseでやっていることと同義の話であると理解しました。
伊達さんは、アカデミック・社会学的なアプローチから語っていましたが、 僕たちはどちらかというと、実践を積み重ねた結果として、後から 「これは理論的には、こう説明できるんだな」 と気づいていくタイプです。
ManabiBaseはまさに、
- ●組織の中に実践共同体をつくること
- ●正統的周辺参加が起こる場をデザインすること
- ●対話を通じて共通認識が生まれ、小さな社会が育っていくこと
そうした取り組みをしているサービスなのだと、改めて意味づけられた感覚がありました。
もちろん、こうした難しい言葉を、そのままセールスの場で使うことはありませんが、背景にはこうした思想や社会理論がある、その上でそれを実装していくサービスを開発するという観点はとても大切だと思っています。
伊達さんとの対話の中で、特に印象に残った話を、ここでひとつ共有したいと思います。
私たちはManabiBaseを通じて育てたい人材を、 「人間力が高い」「社会人基礎力がある」あるいは「骨太人材」と表現しています。

では、この「骨太人材」とは、いったい何なのか。
従前の僕らの定義においては、社会人基礎力(前に踏み出し、自ら考え、周囲を巻き込んでいく)や人間力(周囲からの信頼、規律ある姿勢、ぶれない哲学…)を持つ人材を「骨太人材」として捉え、そうした骨太人材がひと頃に比べると組織の中で圧倒的に少なくなったし、全体的に細ってきていないか?という投げかけをしている。
今回の対話を通じて、新たな側面から捉えると、 骨太人材とは、組織の中で、合理的には説明できないリスクテイクができる人だと。そして重要なのは、骨太人材は「育成プログラム」だけでは生まれないということです。
論理的に完全な説明はできないけれど、 「ここは踏み込むべきだ」と判断し、行動できる人。 そうした人がいるからこそ、新規事業が生まれたり、思わぬ発見が起きたり、大きな決断によってピンチを乗り越えられたりするのだと思います。
ただし、それは組織の中で培ってきた信頼関係があってこそ成立するものでもあります。
信頼がなければ、骨太人材は単なる「危険人物」に見えてしまう。
「あいつは危ない」「やめておけ」そんなふうに、はしごを外され、支援されなくなってしまう。
一方で、信頼があれば、
「合理的には説明できないけど、あいつが言うならやってみよう」
「失敗しても、学びとして回収されるだろう」
そんな関係性が生まれてきます。
この話を聞きながら、少し前の別の話を思い出しました。ここ10年強、いろいろ意見交換をしたり、遊んだり、合宿したり、学びを一緒にしている某大手製造業に務める知人と正月明けに飲みながら色んな話をしたうちの一つです。
彼が言っていたのは、「最近、組織内に急激に中途入社の社員が増えてきて、自分の能力・存在価値をを短期KPIの達成で示そうとするんだけど、そういう事でしか存在意義を証明できない立ち位置っていうのが苦しいと思うし、組織にとっていいんだろうか?」 という話でした。
中途社員は、即戦力として成果を出し、自分の存在意義を証明する必要があります。それは、仕方のないことだと思います。
一方で彼は新卒から20年以上在籍している社員で、 社内に信頼関係や人脈、相互依存の関係性が築かれています。
だからこそ、 「合理的な説明はできないけど、●●(彼)が言うならやろう」 という判断が、社内で通るということ。
その象徴的なエピソードが、彼が始めたある分野の越境学習プログラムでした。製造業の会社が教育企業とタイアップして、他の会社も巻き込みながらのプログラムを展開する。立ち上げにおいては、自らの会社が一定の参加者を集めて、そのプログラムを動かしていく必要がある。
彼は関連する部門長にメールを送り、 「●●が企画して、責任持つから、よろしく。」と、細かな説明・背景理論・なぜそのプログラムで特定のスキルや動きのできる人が育成できるのかという合理的説明(そもそも人が育つということに短期的な因果関係で説明することを求める方がナンセンスですが)無しでも、各部署から人を出してもらったそうです。
中途社員では、まず通らないやり方でしょう。
そもそも取り組もうとしていることは新たな取り組みで、前例もなく、要するにリスクがあることだし、合理的に説明をすることが難しいこと。「この人が言うなら、まあいいか」と思える関係がそこにあるかどうかだと思います。
だからこそ、リスクを取って人を巻き込める人材が必要になる。
これがまさに、伊達さんとのディスカッションを通じて語ってきた「骨太人材」だと感じました。
骨太人材を、 人間力・社会人基礎力という言葉で捉えることもできますし、 別の角度から見れば、 社内でリスクテイクし、イノベーションを起こせる人材 とも言えると思います。
そうした骨太人材が生まれてくるために、組織の中で信頼関係をどのように生んでいけばいいのか。ここで大事になるのが、合理性では説明しきれない「感情的・土着的」な関係性だと思います。
何度も話す。何度も同じ場に集まる。理由はないけど、顔を知っている。一緒に笑った記憶がある。こうした身体化された関係があって、はじめてそうした信頼関係が生まれてくるのでしょう。
当社が現在取り組んでいるのは、まさにこの「関係性が蓄積されるリズム作り」なのだと思います。
僕たちは今、 こうした関係性や信頼が「自然に蓄積されていく場」を、 組織の中につくるソリューション開発に取り組んでいます。
それがどんな形になるのかは、 またあらためてお伝えできればと思います。












