2024.08.16

ワークショップは持続可能な組織・社会づくりへの接続手段

青山学院大学のワークショップデザインプログラム(WSD)を修了しました。毎週の講義や実践、グループワークやワークショップデザインに取り組み、オンデマンド授業とレポート提出も完了。ワークショップに関することをインプットし、実践し、考えてアウトプットするという、集中的な時間を過ごした3ヶ月でした。

 

ここ数年間、会社のマネジメントの中でやってきた場づくり(例えばミーティングや全社セッションの在り方、普段のコミュニケーションの場)は「対話と創造の場づくり」に取り組んでいるという事ではないか?そして、「これはワークショップと呼べるのではないか?」という気づきから、ワークショップとは何か?その理論と実践を学び、意図的にそのような場を作り出すマネジメントをしていきたいと考えるようになりました。また、同じ志を持つ仲間と出会いたいという思いもあり、このプログラムに参加しました。このテーマで「経営スキルとしてのWSD(ワークショップデザイン)(仮説)」は前回のブログで書きましたので、よろしければそちらもご覧ください。

 

最終講義でのワークショップデザインでは、学んできたことと実践の具体を紐づける「型ルタ(カタルタ)」ワークショップを即興でデザインし、これまで実践で実際に自分がデザインしたワークショップと、参加者として体験したワークショップの中のどの場面に、理論的なものの要素が埋められているかを振り返る時間を作りました。

 

※最終日セッションの仲間と、即興ワークショップデザインのアウトプット

 

ワークショップデザインの実践を2回と、数多くのワークショッププログラムに参加し、経験をしたことと背景理論などをインプットしながら、ワークショップによってもたらされる参加者(学習者)に対しての価値は大きく下記の3点だと自分なりのまとめをしました。

 

1.協働の実現:参加者一人では到達できない発想や学び、創作物を共創によって実現する場がワークショップの場です。参加者の多様な視点や考え方が出てくることを奨励し、そういう空気を作っていくことで、一人でアウトプットするのでは到達しないものを生みだします。それを自分一人で実現したのではなく、仲間と一緒に生みだした協働感覚を経験できる場です。

最近よく使われる言葉「共創」。共創ってこういうことか、ということが自分の経験値として落ちてくる時間が作れると思いました。

振り返るとNOKIOOでは「共創」という言葉は2016年ごろから使われたと記憶していますが、浜松でリコー・東芝の行うワークショッププログラムに参加して、浜松内の異なる立場の人たちとワークショップの場の体験をした後に、自分の中に新しい協働感覚が生まれてきて、「共創」という言葉が自分の経験と紐づいて、使える感覚になってきた覚えがあります。

 
 

2.フラットな関係性の構築: 参加者が立場や役職に関係なく対等に意見を交換できる場が作られることにより、コミュニケーションが活性化され、組織内の信頼関係が強化され、固定化された関係性をほぐすきっかけが生まれます。ワークショップの場に集まった時の参加者の間に流れる空気と、ワークショップ後の続きの話、新しい話、懇親会の場での空気は明らかに関係性が異なりました。


3.気づきをベースにした学び: 実施前と実施後の変化(気づき)を認識し、それを言語化する機会でした。自分自身でその気づきを言語化するだけでなく、参加者同士でそれを共有したり、フィードバックをしあうことによって気づきの増幅がされる感覚を持ちました。参加者は自らの成長を実感し、新しい認識を得ることで、行動変容が促されると思います。
 
 

こうして言語化してみると、まさに職場にこうした状況をつくり出したいと思っていたことを実現する手段としてワークショップ的場づくりが関係性や認識を固定化された職場を変えていくきっかけになると感じます。
NOKIOOの場合は僕がそうした組織に対しての課題意識を持ち始めたタイミングにおいて、ワークショップという手法をそのようにとらえて、認識していなかったので、ずいぶんいろんな場づくりにトライして、漸次的に進めてきたので時間が掛かりましたが、そういう認識をはじめから持ってワークショップデザインができていたら、もう少し時間を短縮して今の組織の状態に持ってくることができたと振り返ります。

 

チームとしての在りたい姿を定めようと、2016年ごろにNOKIOO Wayを定めましたが、ワークショップ・場づくりというここまでの文脈を頭に置きながら、あらためてNOKIOO Wayを読んでみると、この在り方を実現させるための手段としてワークショップ的場づくりが効くことが確認できます。

 

ワークショップというものを、さらに俯瞰して大きな視点で見ると、単なる学習の場を超え、意図を持って、持続可能なより良い社会や組織に接続されていくための有効な手段だと感じたので、そのような視点でワークショップがもたらす効果(これまた仮説)も書いておきたいと思います。

 

ワークショップの効果は、単なるその場の一時的なものではなく、時間や場所を超えて、持続的な影響を及ぼすと理解をしました。ワークショップは、意図を持ってより良い社会や組織に接続するための手段であり、人間のポジティブな側面を引き出し、それを反映した組織や社会を作り上げるためのプロセスだと感じました。ワークショップによって引き出される参加者間の関係性や協働性は、ベースが正義、協力、善意といった人間の正の部分をを基盤とした活動であり、組織の持続可能な発展とコミュニティのより良い未来へとつながるのだと思います。

WSDプログラム内のいくつかの講義の中で触れられていたこととして、ワークショップデザイナーが持つべき前提として以下のことが挙げられました。

●人間には本能的に協力する心が備わっている。(脳科学的にも実証されている)

●宗教、平等、自由といった共通の価値観が社会を作り出す力となる。(サピエンス全史で言ってた虚構を信じる力)

 

ワークショップという草の根的な場で関係性を築き、対話し、一緒に創造するきっかけが作られ、その場のステップを上手に作ることで、こうした人間の本質的な特性を引き出しながら場を作ることができます。その活動はワークショップの場を離れても、それぞれの組織やその延長にある社会に対話や創造のカルチャーを引き継いでいくと考えました。

 

一方で、ワークショップがすべての課題を解決できるわけでもない事を感じています。場の設計や現実活動への接続、行動変容が伴わなければ成果を得ることは難しいです。また、課題や目指す未来に応じて、ワークショップ以外の手段も必要となるため、適切な方法を選択することが重要だと感じました。

 

これからは実践を通じて、さらにワークショップデザインスキルを磨いていきたいと思います。ともに学び、多くの気づきを与えてくれたWSD41期の皆さん、そして講師や事務局の皆さんに心から感謝です。