2019.11.18
ミライの働き方2019〜企業価値を高める本当の働き方改革〜研修レポートVol.1
2019年10月9日(水)あいホール(浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター)にて、「ミライの働き方2019~企業価値を高める本当の働き方改革~(以下、「ミライの働き方2019」)」を開催しました。
「ミライの働き方2019」は、浜松市が主催する「ワーク・ライフ・バランス等推進プロジェクト」の一環です。組織開発やワークスタイルの専門家である沢渡あまねさんを講師に招き、実践的な働き方改革の手法を学ぶ、全5回の研修プログラムとなっています。
第2回は「職場の問題地図ワークショップ~ムリ・ムダ・おかしい!を発見する~」をテーマに研修会を開催。25名の受講者はワークショップを通して「職場の問題」について考えました。
本レポートでは、研修会の内容をお伝えしていきます。
アイスブレイク「職場の問題かるた」
今回の研修会は、4~5人のグループに分かれて、グループワークを中心に行いました。
まずはお互い簡単に自己紹介。初対面ということもあり、少し緊張感のある中で研修がスタートしました。
そんな緊張した空気を変えたのが、アイスブレイクで実施した「職場の問題かるた」です。
沢渡さんの「職場の問題かるたをしていきましょう」という声かけで、グループごとに絵札を机に並べました。
「職場の問題かるた」とは、沢渡さんが考案したコミュニケーションツール。かるたの札には職場の問題が書かれていて、「言える化」と「見える化」のヒントを与えてくれます。
読み札が読み上げられるたび、会場からは笑い声が上がり、次第になごやかな雰囲気へ。実は、かるたの読み手は「妖怪ウォッチ」等の有名作品に出演されている声優の戸松遥さん。
誰もが実感している「職場の問題あるある」の表現は、まさにプロの声優ならでは。かるたは大いに盛り上がりました。
1.グループワーク1: 職場の生産性を阻害する要因を書き出す
かるたを終え、緊張がほぐれたところでさっそくグループワークを実施。グループワーク1の目的は、生産性を阻害している要因を言語化、見える化すること。
グループワーク1は次のような手順で行いました。
1.自分の職場の生産性を阻害する要因となっていると考えられるものを各自付箋に書き出す。
2.付箋内容をグループで共有。
3.付箋を模造紙に貼り、グルーピングする。
まずは各自、職場の問題点の書き出しを行います。ワークの前にかるたを行ったことが問題点を考えるヒントとなり、言語化がとても楽に。どんどん付箋に書き出していきました。
書き出しの後は、それぞれの職場の状況や自分の立場もまじえてグループ内で付箋の内容を説明。質問や共感をし合いながら、グループで「職場に潜んでいる問題」を見える化していきました。
2.発表
続いて作成した模造紙について、どんな意見が出てどこで盛り上がったかを発表しました。グループの発表が終わるごとに、沢渡さんは改善へのヒントを的確にアドバイス。
例えば「受信するメールが多すぎる」「上司が忙しくて仕事の確認ができない」という問題点について、沢渡さんは、「社内の連絡はビジネスチャット、社外はメールで」と言います。社内の連絡をビジネスチャットにすることで、対面で話せるタイミングを待つことなく確認や連絡が可能となり、さらにそのやりとりを関係者で共有することで仕事の属人化を防ぐこともできます。
「部下のやる気がない」「向上心がない」という問題点には、沢渡さんは「働くことへのエンゲージメントは2軸あるんですよね」と、ホワイトボードに表を書き始めました。
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仕事へのエンゲージメント 高い |
仕事へのエンゲージメント 低い |
組織へのエンゲージメント 高い |
1 |
2 |
組織へのエンゲージメント 低い |
3 |
4 |
エンゲージメントとは、「愛着」「思い入れ」と解釈されるものです。「組織へのエンゲージメントが高い状態」とは、会社の理念やメンバーに愛着を感じている状態、「仕事へのエンゲージメントが高い状態」とは自分の職務にやりがいを感じ、誇りを持っている状態をいいます。
自分が、あるいは自分所属するチームのメンバーが、1~4のどのエリアにいるのかを考えてみると、対策が見えてくるかもしれません。
また、別グループの「定例会議が多い」「会議で決まらない」という問題に対しては、「まずその会議が必要かどうかを考え直しましょう」「定例会議の場合は、日時の設定が適切かどうかを考え直しましょう」と沢渡さんは言います。
「月曜朝一に会議をされている会社は多いと思いますが、休み明けでやる気が出ない人も多い時間帯です」と会議の効率化へのヒントをお話しされました。
現場目線、マネジメント目線など、様々な視点からの課題に対する沢渡さんの具体的な対応策を、参加者は興味深く聞いていました。
3.グループワーク2:解決方法を考える
2つめのグループワークは、「問題の解決方法を考える」です。手順は以下の通りです。
1.先ほどだした問題点の解決方法を考えて、付箋に書き出す。
2・書き出した付箋を、自分ですぐ取り組む・意識すること/ちょっとした支援があればできそうなこと/会社の壁を越えてできそうなこと/難しそうなことの4種類に分類し、模造紙に貼る。
解決方法の分類をグループで考えていると、実施にあたって「難しそうなこと」はあまり多くないことに気づきます。作成した模造紙を見て共有し、参加者は「改善できそう」という前向きな気持ちになっていました。
まとめ:働き方改革に必要な考え方と視点の提示
沢渡さんは、「健全な組織のバリューサイクル(※)」図を提示し、「健全な働き方改革を行いましょう」とお話しされました。「まず、手始めにひとつ改善テーマを決めて1年間取り組んだ上で、振り返りをするという一連の流れを現場でやってみましょう」とメッセージをいただき、研修会は終了しました。
※1 バリューサイクルとは|
組織の価値を高めるブランディング手法。組織の価値を見出し、内外にファンを生み出す仕組みのこと。詳しくは、講演会取材記事後編「4.これからの時代のマネジメント」で解説。
参加者の声
・まず言語化するところから、自分の取り組むべき課題、周りへの期待が明確になった。
・地元企業の方と対話する機会が少ない為、貴重だった。
・やらなければならないと判っていても、やり方が分からなかったり、難しいと思っていたことの解決に向けた考え方が見えてきた感じがします。
・多くの気づきを得ることができた。改善と言うとプラスの要素を増やすことに意識がいってしまうが、「やめることを決める」ことの大切さも改めて認識できた。
・ヒントをたくさん得た。企業規模に関わらず悩みの根本は同じというところを知り、無力感が少し軽減された。
「ミライの働き方2019」が、みなさまが働き方改革を企業価値と人材育成につなげていくための一歩になれば嬉しく思います。