ワークスタイルブログ

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2019.10.24

【後編】"本当の"働き方改革を学ぼう「ミライの働き方2019」セミナーレポート

 

 
2019年8月20日(火)、あいホール(浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター)にて開催した「ミライの働き方2019~企業価値を高める本当の働き方改革~(以下、ミライの働き方2019)」。
後編では、職場の成長を妨げる妖怪への具体的な対処の方法と、企業価値を高める働き方改革の本質に迫っていきます。職場の生産性を下げる問題について参加者とともに考えた前編はこちらです。
 

3.職場の妖怪を斬る

 

 

ここからは、職場の問題を妖怪に例えた「職場の問題かるた」を読み上げながら、職場の生産性を下げているモヤモヤへの対処法を考えていきました。

 

・む 無駄な会議が多い

・ぬ 抜け漏れだらけ、手戻りだらけ

・も 目的が見えない、わからない

 

どれも職場でよく見られるモヤモヤです。これらの問題解決の基本となるのは「仕事の依頼時/着手時に予防すること」です。

 

「5つの要素」による“景色合わせ”で、妖怪モヤモヤを斬る!

 

実は、仕事は、5つの要素に分解できます。この5つの要素を、仕事を始める前に受注者・発注者の双方ですり合わせておくことが大切です。

 

仕事の5つの要素とは。

 

 

1.(仕事の)目的・ゴール

2.インプット

3.成果物

4.ステークホルダー

5.効率

 

それぞれ詳しく見ていきます。

 

1.(仕事の)目的・ゴール

例えば、お客様への説明資料を作るという目的があったとします。その資料にどのような効果を求めるのか、目的をメンバーに共有することで、情報収集に苦労したり、的外れな内容の資料を作ったり、といったムダを減らせます。

 

2.インプット

インプットは、成果物の原材料となる要素です。お客様がその資料で何を知りたがっているのか、などのニーズを事前にメンバー間で共有しましょう。

 

3.成果物

成果物のイメージをすり合わせましょう。「棒グラフで表記してほしかったのに、円グラフで書かれてしまった」といった手戻りを防ぎます。

 

4.ステークホルダー

その資料は「誰」のために作るのか。後工程で「誰」が使うのか。「誰」を巻き込めば、より良い参考情報が手に入るのか。そうしたステークホルダー(関係者)を検討しておくことは、アウトプットの質や効率を高めてくれます。

 

5.効率

上記の4つの要素が定まってくると、効率(所要時間など)を見積もることができます。例えば「この仕事の所要時間は2時間」と分かれば引継ぎも楽になります。効率的な人・やり方を見出すことで、属人化しているノウハウを人材育成に使うきっかけにもなります。

 

「この仕事の5つの要素を書き出すことで、仕事の頼み手と受け手の見ている“景色”が合います。仕事の抜け漏れを補正できるだけではなく、受注者・発注者同士の関係性も良くなります。いわゆるコラボレーションの関係性を作れます」と、沢渡さんより解説がありました。



 

職場に妖怪を住まわせないために常識を疑ってみる

 

 

「常識を疑ってみる」「やってみる」「やめてみる」「期限をきめる」。この4つの「る」を使って、つねに職場の常識をアップデートしていくのが重要とのこと。

 

しかし、職場には必ず、変化を怖がる人がいます。そこで、期限を決めて仕事のやり方をアップデートするのがポイントです。成果が思わしくなければ、元のやり方に戻せば問題ありません。

 

「完璧なるペーパーレスを実現した長野県の中小企業(製造業)があります。社員の平均年齢は54歳。タブレットを導入しようとした際に、社内で猛反発が起きてしまいました。そこで、お試し期間を設けて、タブレットを使ってもらいました。思ったより使いやすいし、作業がとても楽になったということで、タブレットの導入が一気に進みました。

 

人は、気持ち良い体験をすれば、製品やサービスのファンになるということです。これを、マーケティング用語で“最適なユーザーエクスペリエンスを得た”と言います。こんなことが、地方の工場でも起こっています」

 

今日の常識は明日の非常識かもしれません。健全な問題意識と成長欲求を持ち、常識をアップデートしていくことが大切です。

 

「健全な問題意識を持ち、仕事のムダを減らして常識をアップデートする。すると、他地域や他企業の人たちとコラボレーションしやすく、スピード感のある強い組織になっていきます。仕事を見直すことは、組織と社員を正しくアップデートしていくチャンスです。ここまでお伝えしたことを、ぜひチャレンジしてみてほしいと思います」と、沢渡さんよりコメントがありました。



 

4.これからの時代のマネジメント

 

 

職場にひそむさまざまな問題を例に挙げながら、解決の方法を考えてきました。ここからは「ミライの企業は何を目指していくべきか」をテーマに、企業価値を高める働き方のポイントが語られました。

 

「主体的に仕掛けをつくって、職場を変えていくことをマネジメントと呼びます。マネジメントの本質とはバリューサイクル(※1)を回すことです」

 

 

「働き方改革により生産性を高めるのは、バリューサイクルの目的である組織のブランディング(※2)を行うためです。ブランディングのためには、ビジネスモデルを変えていかなければなりません。そのためのコアサイクル(未来価値創造・育成と学習・業務改善)は、現場レベルの日常業務で行う部分です」

 

まずは「組織のブランド=私たちが提供できる価値とは何か?」を話し合っていくことが大切です。隙やテーマをつくって「次は何の研究をしていくか」「何のプロを目指すべきか」といった話し合いを組織内に起こせたら理想的です。バリューサイクルを回すためには、ダイバーシティも大切です。多種多様な考えをもった人たちを巻き込み、組織の価値について考えましょう。

 

バリューサイクルを回していくと、組織の中の人は成長を実感でき、その分野で一人前になっていきます。組織の外にいる人は『本当に研究に専念できる企業だ』といったイメージを持ちます。組織に対する愛着や仕事に対する誇りが生まれるんですね。

 

こうして、お客さまやミライの社員から選ばれる企業になっていきます。このバリューサイクルを回すのが、本当の意味での働き方改革です」

 

最後に、

 

バリューサイクルの図を現場に持ちかえり、どの組織・人に改善を期待すべきか考えてみてください。組織の内外の人が正しく持ち場を決めて、正しく変革していく。個人も組織も正しく成長して、正しく楽ができる。そうしたミライを作っていってください」と、沢渡さんよりメッセージがありました。

 

※1 バリューサイクルとは|

組織の価値を高めるブランディング手法。組織の価値を見出し、内外にファンを生み出す仕組みのこと。詳しくは、レポート後編「4.これからの時代のマネジメント」で解説。

※2 ブランディングとは|

商品やサービス、企業といった各々のブランドにおいて、顧客が得られるイメージ・体験を向上させたり、ブランド独自の価値を高めたりする活動のこと。

 

講演まとめ

 

本当の働き方を支える3つのキーワードは、「言える化」「見える化」「自分の勝ちパターン」。大事なのは「常識を疑ってみる」ことで、その種は、現場の人が普段感じているモヤモヤにある。現場のリアルを組織や上層と景色合わせして改善につなげていくことが、企業価値を高める「働き方改革」の一歩となる。

 

 

質疑応答

 

 

1.クラウドツールを使うことで、その日じゅうに日報が提出されて、即日でメンバー全員が見られるようになりました。日報をより有効に活用している組織の特徴を教えてください。

 

沢渡さん:とても良いポイントだと思います。日報を有効に活用するためのコツが2つあります

 

1つ目は、ついでに気軽に配信できるようにすることです。例えば、営業先で「お客さまの在庫が切れた」と、チャットツールに書くだけでも「言える化」は実現できますね。ツールも使いやすいもので良いと思いますよ。「わざわざ」を「ついで」に変えるのは、生産性向上のポイントです。

 

2つ目は、日報の目的・テーマを共有することです。例えば、「今、営業チームの課題は、リピート率を上げることだ。リピートにつながりそうな気付きがあったら、キーワードで良いからここに書き込んでくれ」。このように、日報を通じて知りたいことと背景を上長は明確にしておく必要があります。

 

2.創造的なものづくりのために、組織の中に創発的な動きを生み出したいです。オペレーションと創造するための動きを、どのように組織内につくれば良いでしょう

 

沢渡さん:オペレーションができる人材と創造的な活動ができる人材は、分けて採用することです。ただし、オペレーションの人材でも創造的な活動をしてみたいという人には、投資をして教育をしていくこと。人は、自分が経験していないことや育成されていないことはできないものですから。

 

組織づくりにおいても、オペレーション部隊と創造する部隊を分けることです。ただし、オペレーションの中でも、業務内の数時間は創造的な活動に使うとしても良いと思います。教育を計画して実施していきましょう。

 

3.仕事の5つの要素をもとに“景色合わせ”をする作業を、組織に定着していくための手法や事例はありますか?

 

沢渡さん:組織をどの単位で捉えるかによります。全社単位で捉えるなら、全社ルールとしてトップダウンで指示するしかありません。目先の業務から改善したいと思えば、変えるべきは課や事業部、支店の単位ですね。改善に取り組むうち「浜松支店は、こういう取り組みでこう変わったらしい」という評判が立つはずです。すると、他支店や本社にも取り組みが波及していくでしょう。

 

もう1つ、働き方改革の取り組みを進めるにあたって大事なことをお話します。

 
いきなり成果を追おうとしないことです。取り組みの評価には、成果と変化という観点が必要ですが、風土を変えていくためには、まず変化を追ってほしいと考えています。年数をかけて培ってきたものは、ゆっくり変わっていくのです。
 

成果は数字で見えますが、変化は言語化してください。「会議のやり方を変えたら、意見を言うようになった人が増えたよね」といったように。上の立場の人が言語化すると効果的です。「最近、会議の雰囲気が良くなったね」と言えば、周りの人も「確かに」と思います。そこからチーム全体の言語化、ひいては改革が加速していきます。

 

参加者の声

 

製造業企業さま

働き方改革の具体的な進め方について学びにきました。社内のさまざまな部署・メンバーから多彩なアイデアが出ていますが、本質的な改善にならない気がしていました。

 

講演の中で一番勉強になったのは、本当に必要な働き方改革について、メンバー同士で考えて動くということです。今まで1人ひとりの考え方や仕事の内容、環境も違う中で、一概にルールを定めようとしていたように思います。

 

まずは、事業部長や現場の人たちに何に困っているのかを聞いていくことから始めたいと思います。社員のニーズがあるかどうかも含めて、当社ならではの働き方改革を進めていきたいと思います。

 

総合建設企業さま

最前列で聞かせていただきました。沢渡さんのお話に、終始うなずいていました。特に、妖怪モヤモヤと妖怪常識という考え方は、非常に印象に残っています。

 

働き方改革という言葉自体が、とても曖昧な概念だということにも改めて気付けました。課題をブレイクダウンして現場に落とし込んでいくという、手法も分かりやすかったです。仕事の5つの要素を使った“景色合わせ”は、当社でもやってみたいですね。

 

 

全5回にわたって開催される「ミライの働き方2019」では、10月から11月にかけて、学びを深める研修会と先進企業の事例発表会を行います。11月6日(水)の研修会と11月26日(火)の事例発表会についてはお席に余裕がございます。詳細のご確認やお申し込みは、ミライの働き方2019のホームページをご覧ください。

 

「ミライの働き方2019」が、みなさまが働き方改革を企業価値と人材育成につなげていくための一歩になれば嬉しく思います。


 
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