2025.04.29
チームワークを定着させる組織内の流行り言葉づくり
前回のブログに引き続き、今年3月に実施した越境型次世代リーダー育成プログラムの修了リフレクションセッションでの受講生の発表からの気づきを起点にしてブログを書きます。
今回は「チームワークを定着させる組織内の流行り言葉づくり」というテーマで、私たちNOKIOOの組織内の言葉の紹介とともに、チームワークカルチャーを作っていくチームキーワードがあるのではないか、という考察です。
前回記事はこちら「問いの蓄積は資産である」
その修了リフレクションセッションの一つであるグループの発表の中に、こんな内容が含まれていました。
変化したことベスト3の中で、
これまではチーム内での連携シーン(仕事をお願いしたり、相談したりするシーンにおいて)で、冒頭の言葉は「すみません」だったものが、何事も「ありがとう」という言葉から始めるように変化してきたというものです。
発表時の模造紙を見ていると、枕詞「チームとして」という記載も見られます。
グループ発表の際には“魔法の言葉”という表現がされていました。
発表グループに対する僕からのフィードバックではこんな話をさせてもらいました。
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組織の在り方を定着・促進させるためには、「流行り言葉(魔法の言葉)」を作る考え方が有効です。組織内で使われる言葉と、その言葉に触発されたメンバーの行動の蓄積が、やがて組織カルチャーをかたち作っていきます。
例えばNOKIOOでは「そもそも何だっけ?」みたいな言葉がミーティングで投げかけられるので、ふと議論がさまよった時に目的に立ち帰れるんです。
また、チームリーダーも完璧ではないし、自分がミーティングの進行をして、内容に対しても、時間配分にも、メンバーのコンディションや参加姿勢にも気を払いながら、あれこれやっていると、リーダー自身もてんてこ舞いになりますよね。必ずしもリーダーがいつも冷静沈着にメンバーのチームワーク発揮、パフォーマンス発揮のための仕切りができるわけではない。そんな時にチームメンバーがチームの流行り言葉を口にしてくれることで、リーダーのマネジメントを助けれてくれるケースもありますよね。
先ほどの例で行くと、チームメンバーが「そもそも何だっけ?」と一言投げ込むことで、チーム思考全体を目的に回帰させられます。目的回帰にするための場のマネジメントはリーダーだけに負わせるのではなく、メンバーにもその一部を負ってもらうために、組織全体に自分たちが実現したいチームワークの在り方を助長する言葉・フレーズを流行らしておくのもよい考え方だと思いますよ。
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ということで、あらためて当社NOKIOO内の流行り言葉(流行りというか組織に定着した言葉)をいくつか紹介したいと思います。転職で当社に移ってきたメンバーに言わせると、はじめはその言葉が意味することがピンと来なかったそうですが、いずれの言葉も難しいカタカナ用語でもなく、なじみのある日本語がベースなので、その言葉とそのシーン・行為を見て「なるほど、そういうことね。」と比較的早く腹落ちするようです。
(NOKIOO流行り言葉例)
・壁打ち
・つぶやき
・声出し
・MMOT
・ナイストライ!
・握り
・景色合わせ
・完成度(●●%)ですが
・ナイスヘルプ
・ヘルプです。
例えば「壁打ち」は、自分がまだはっきり言語化できずアウトプットまで至れていないが、言語化を促進していくために、いろいろ質問を投げかけてもらい、それに答えていく往復のやり取りの中で徐々に言語化ができアウトプットにつなげていくための機会ですが、一人で悶々としているぐらいなら早く「壁打ち」を誰かに付き合ってもらって、チーム全体で仕事を前に進めていきましょうよ、というもの。
「つぶやき」や「声出し」は、その情報は今のテーマと直接的に関係がない、すぐに役立つ情報ではないかもしれないけど、遠からずの情報であったり、時間・空間的にぐるっと回って関係するかもしれないから共有しておきます、といったニュアンスでの情報共有。枕詞にはこの言葉があることなので、そういう類の共有だから、受け取った側はそれをこの場で重要扱いして議論に組み込まずに一旦受け止めるレベルでも良いし、発言側も確信めいたものが無くても発言ができる。情報の冗長性を組織全体で高めるマジックワード。
あとはヘルプシーキング(助け合い、「連携」して、新しい価値を生みだす)を推奨しているだけに「ヘルプ」を使った言葉も当社組織の中では組織言葉になっているようです。
「ナイスヘルプ」はヘルプを受け取った側が、そのヘルプは早めに出してくれてチーム成果を上げるためには大事だったということを認めたり、ヘルプを出しやすくするための空気づくり。メンバーからも「ヘルプです。」がチームチャット書き込みの枕詞で使われてますね。↓↓
このチームワークを促進させる流行り言葉づくりの事例からは、こんな3つのことが言えるのかもしれません。
1. チームカルチャーは「行動の共通認識」から生まれる
組織内のチーム行動に関する流行り言葉が生まれるということは、単なる合言葉を持つという以上に、「どんな行動を良しとするか」 の共通理解を作り、その行動を自然と促すことになります。
「壁打ちしよう」「ナイスヘルプ!」といった言葉が、いつの間にかその行動の推奨につながり、自然とチームの中で再現されていきます。
言葉を通じて行動をすり合わせたり、促していく。これがカルチャーづくりの第一歩です。逆を返すと、よろしくない流行り言葉は、よろしくない行動を促進し、よろしくないチームカルチャーにつながりますので、組織のリーダーはチーム内で使っている言葉に注意を働かせないといけませんね。
以前、NOKIOOの中でも「コミュニケーションコスト」という言葉が流行ったことがあり、これが対話時間や顧客コミュニケーションの往復をコストとして見る恐れがあったため、その言葉に釘を刺したことがあります。
2. メンバー全員が「場づくり」に参加できる
リーダーのみがチームマネジメント、チームワークを作っていくわけではないし、一人の人間にできることは限りがあります。
「そもそも何だっけ?」「景色合わせしよう」など、メンバーが場の空気を調整したり、目的に引き戻したりするための言葉を自然に使えることで、
全員でチームのコンディションをマネジメントできる ようになります。
つまり、チーム内に流行り言葉が根づくことは一人のマネージャーやリーダーに依存したマネジメントではなく、「全員マネジメント」の素地を育てることになりそうです。
一人のマネージャーにチーム作りを依存していると、そのマネージャーが移動になったとたんにチームにガタが来てしまいそうですね。
3. 言葉の設計は「自然体」と「親しみやすさ」がカギ
あらためて当社の流行り言葉を見てみると、難解な専門用語では無いことに気づきました。※MMOT以外
日常の日本語にちょっとしたニュアンスを持たせた言葉だからこそ、使いやすく、広がりやすい。 最初はピンと来なくても、現場の行動と結びつくことで、自然と意味が腹落ちしていきます。
カタカナ語や小難しいフレーズではなく、「使いたくなる、口に出したくなる」言葉を設計する。 これが、流行り言葉づくりのポイントだと思います。
自分たちのチームを前に進める言葉には何があるか?一度、自組織で棚卸ししてみてはいかがでしょうか。今回こんな気づきをもとに、僕も自社のコミュニケーションツールの中をうろうろしてみると、共通性のあるワードへの気づきがありました。
ぜひ、あなたのチームでも「未来を育てる言葉」を探してみてください。